弁財天とアフロディーテ(ビーナス)は同じ神か?
結論から言えば、直接のつながりはないが、驚くほど似ている。
弁財天のルーツはインドのサラスヴァティー、古代の聖河サラスヴァティー川を神格化した水の女神だ。川の流れる音が言葉・智慧・音楽の神格へと発展し、仏教とともに東アジアへ伝わって日本では七福神の一柱に収まった。
一方アフロディーテ(ローマ名ウェヌス=ビーナス)は地中海世界の愛と美の女神で、海の泡から生まれたとされ、メソポタミアのイシュタルなど西アジアの女神たちとも習合しながら形成された。
語源を見ても、Venusはラテン語・印欧祖語の「愛・欲望」に由来し、サラスヴァティーは「水を持つもの」。言語的な親戚関係はない。
それでもこの二柱が重なって見えるのは、「水・美・芸術・豊穣」という属性の組み合わせが完全に一致するからだ。比較神話学では、印欧語族の共通祖先が持っていた「水の女神」イメージが、西へ向かってビーナスに、東へ向かってサラスヴァティーになったという説もある。一方が他方に「転じた」のではなく、共通の祖先から双子のように枝分かれしたというイメージが近い。
ユーラシア大陸の東西で、人間は同じ形の神を必要としていた——その事実のほうが、単なる同一説よりもずっと面白い。

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