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2022年4月2日土曜日

7430 Seeley-Kawasaki H2A 1973

 

7430 Seeley-Kawasaki H2A 1973


「解せない買い物」

 「人のセックスを笑うな」という、確か芥川賞か直木賞かの候補になった小説があったと思うが、「人の買い物を腐すな」という結論になりそうな文章、行きます。

 前の会社、今の会社と、住宅地盤に関する仕事をしている。三つ前の文章にも書いた通り。で前の会社にいた時、”機械式”でなく、手回しでサウンディングと呼ばれる地盤調査を行っていなんだが、オレがいた会社では「すっとんクルクル」と呼んでありがたがったタイプの地盤があった。現場作業員的にである。地表から軟弱で、100㎏f、10KNの重りを乗せるか、それすら乗せるまでもなく、調査器具であるスクリューポイントいうねじねじがついた棒が、回さずにずぶずぶ沈んでいくのである。回す手間がないだけ、すごく楽。100kgf乗せなくても沈んでくれるなら、尚楽。乗せるのも人力で、載せる台に5㎏、10㎏、10㎏、25㎏、25㎏、25㎏と載せていくので、5kgf、15kgf、25kgf、50kgf、75kgf、100kgfの段階での荷重での調査具、ねじねじのついた棒の挙動を観察することになる。さすがに、調査員もそこを歩いているわけだから、5kgfでの沈み込み、自沈はないのだが、50kgfぐらいから怪しくなる地盤っていうのは結構あって、ちょっと乗せて急に沈み込みそうなら重りをさっと外すのが正式と習ったが、外す間もなく、どっしゃんと落ちるように自沈する地盤もあったりした。当然、そういう地盤は軟弱である、ほぼ。
 っていうか、そんな地盤、まぁ、地表こそ、乾いた土に見えても、地下水位が地表のすぐ下ぐらいにあって、もう、土のふりした水と言っていい。まぁ、専門的には別の言い方があるんだけど。
 で、まぁ、オレら(現地で調査作業する奴)は楽でいいんだけど、なんで、こんな土地かうかね? なんでこんなところに家建てるかね? と思ってしまっていたわけである。

 あぁ、そうだ、で、「すっとんクルクル」なんだけど、一応ね、6~7mの深さまではなんとか調査しましょうね、というお約束があった。基礎の下にかかる建物のチカラというのは、まぁ、何となく広がっていくような広がっていかないような、玉ねぎを逆さにしたような、じゃなくて「球根」なんて言い方してたな。まぁ、単純にそんな力がかかったとして地盤に影響があるほどの力がかかるのはどっかその辺まで、と、ざっくりと言ってたんだけど、ま、実際はそんな単純なものじゃないんだけどね。で、その6~7m、すとんと落ちるように自沈して、そのあと硬い層に当たって、くるくる軽やかに空回りする様を言い表した言葉であります。

 今勤めてる会社の近くも割とそういうところが多く、印象深いのが、10mまで一度も手回しせず終了、5点すべてそうだった、というところがあった。現在、しっかり店舗付き住宅が建っていますがね。

 まぁ、建つには建ちますよ。しっかり正しくコストをかけて地盤にも手を入れれば。でも、地盤にお金をかけるというと、なんか損したみたいなこと言う人もいて、なら、なんでそこに土地を買った? ということになる。解せない買い物であります。

 直接地盤についてではないが、東京都民の、収入がやや多い人々のタワマン信仰も解せない。まぁ、これはオレの価値観によるものだが、どうも、ね、同じく前の会社にいた時ボーリング調査で敷地内に入った養鶏”工場”の鶏舎の中のブロイラーを連想させて嫌なんだよねぇ。一匹一匹が最小限のスペースに押し込められ、同じ方向を向いている様っていうのは、不気味ですらあったんだが、まぁ、それとタワマン、延いては東京都民の皆さんの暮らし向きと重ねるというのも乱暴なんだが、とりあえず、建物そのものはまっとうに作られていれば、想定される最大限の大きさの地震とかには耐えられるのでしょうが、伝え聞くタワマンの立地、ことごとく液状化したり、場合によっては足元津波にやられるところだったり。大地震となれば、救援が届くのも結構時間がかかるだろうし、電気はないと考えるべきだから高層階にいれば上り下り大変だし、建物だけは無事で、中も大変、外も大変、というのが想像されるんだが、対策されてるんだろうか? そう考えるだけで、よく、そういう物件欲しがるよなぁ、と思ってしまう。これも、オレ的には解せない買い物。

 でもね、仕方ないっていうか、まぁ、当地のそういう解せない買い物って、出資者たる親の存在があるんだよね。親の土地で建てたり、親にお金出してもらう代わりに近くに住むことになってしまったり。そういうパターンがかなり多い。

 でも、そういうパターンと離れた買い物をした同級生が二人ほどいて、一人は、海の近く、一人は、川の近くの、江戸時代までは湿原であったであろう所。最近では寧ろオレの住んでる町内が床下浸水で全国ニュースになったりするが、その前はよく水が付いたあたりである。行ったことはないが、しかし、二件とも、そんな大げさな家ではなさそうだ。子供に継がせるとかそういうことを前提にせず、自分が気持ちよく住めそうなところに家を買ったみたいだ。

 いるよね。タワマンもそうか。よい眺めが何よりの自分の人生に対する報酬であるようにとらえているのかもしない人。

 そう考えると、リスクを承知したうえであればそういう買い物もありなのか、と思ったりもする。どのみち、何があっても大丈夫なんて言うところは日本にはほとんどないのだし。

 というところで、画像につながる。シーリーというメーカーのフレームにカワサキの750マッハのエンジンを積んだスペシャルバイクである。まぁ、合理性で乗るものじゃない。乗りたいから乗る。文句あるか? と言われそうな単車である。まぁ、そういうのでいいんじゃないかとも思ったりするのだ。


 ただただ、やはり事前に相談を受ければ、「やめた方がいいんじゃない?」と言ってしまいそう。でも、買うんだよね。では買った後どうするか、というのが大事な話になるわけだ。

2022年3月30日水曜日

7427 G200 Charade De Tomaso

 

7427 G200  Charade De Tomaso


 画像とは全く関係ない、今日ふと思ったことです。

 広告やってゲーム作って、1998年から地質調査、っていうか土質ボーリングの会社に勤めていた。今の会社もその流れなんだが、21世紀に入ってすぐぐらいか、鬘のおじさんが国会に呼ばれて、何かもちゃもちゃやっていた耐震偽装疑惑なんてのがあって、ホントはその前、阪神淡路大震災あたりから、住宅はじめ小規模建築物なんて言われる建物に地盤調査やらないと建築確認降りないよ、という時代になって。

 前いた会社もやりましたよ、所謂スウェーデン式サウンディングってやつ。なんでスウェーデンかというと、まぁ、それ始めたのがどっかそこの辺、っていうだけの話。サウンディングというのは、ずばりサウンドで音を聞くのが重要ですよ、ってことなんだけど、それをわからずにやってるその方面の方も結構いる。
 なんか、そんな感じで地面に穴開けたり、土の硬さの評価をしたりするやり方について、それを始めた地域の名前がついてたりすること、結構あって、日本でも井戸なんか掘るのに上総掘りなんていうのがあったり、そう、忘れちゃいけない。道路なんか造営するのに、California Bearing Ratio、略してCBRなんていうのがある。ホンダのバイクの名前じゃありません。いや、この世界はいる前はオレもホンダのバイクとばかり思っていた。

 一昨年からか、国交省で、スウェーデン式サウンディングと呼ばず、Screw Weight Soundingと呼ぶことにいたしましょう、ということになったんだが、やる事は同じです。昔付き合ってた女性は「なんかねじねじするやつ」といってました。そう。ねじねじするんです。

 でね、その入り方、回転抵抗とか、入る早さとか、手に伝わる感触とか、そう、上に書いたように音。それを総合的にかんがみたうえで、ある程度経験も経て、このあたりの深さはたぶん(間違いなく)砂だろう、とか、粘土だろうとか、後、経験的に得られた数式に当てはめて、N値と言われる、地面の硬さを「推定する」わけですよ。

 オレが前いた会社は、従って手回しにこだわっていた。便利な機械もあるんだけど、樹落としてしまう情報が多いから。一人が回して一人が支える。何しろ100㎏のおもり(土木の世界では1キロニュートンという単位系を使います。本当は0.98キロニュートンだけど)を乗せて、そういう力をかけて地面にねじ入れていくわけですから。
 非常に疲れる仕事でありました。若くないとできません。健康じゃないとできません。

 で、住宅用、隅4点真ん中1点、計5点そういう作業をして、人件費だけ、利益率非常に低く抑えて、5万円。あ、そうそう、オレがいた会社、2メートルまで、手彫りで穴開けて、本当にサウンディングの見立て通り、砂なのか粘土なのか、変なゴミ埋まってないか、水がわいてこないか、調べて、そのお金でやってました。

 でも、なんか、機械もちこんで、一人で作業(手で掘って地面の中を見ず、ねじねじ穴開けるだけ)してその半額でやっちゃう業者が増えちゃって、なんだかな、と。一応ね、技術と知識を誇りにやってたわけです。買いたたかれるのはちょっと楽しくない。Screw Weight Sounding、住宅の、止めちゃったんです。楽しくないし割に合わないし。どうしてもと請われれば5万円いただきますよ、って。
 あ、でも、同じくサウンディングと呼ばれる別の、Automatic Ram Soundingてやつもやってて、それはさすがに機械なんだが、それは結構お呼びがかかりました。今日、ニュース映像、調布の陥没現場での調査風景に、それ、出てまして。なんか久しぶりに視たな、とい感じ。

 で、です。今の所沢の作業場というのは、かつての会社の同業者、地質調査を専門にしている会社の敷地なんですが、そこでScrew Weight Sounding、機械式でやってデータを取る必要があって、でも、また近々行くにしても、ちょっとそのために今動くわけにはいかないので、というところで、しかし、その敷地の地質調査屋さんも、オレの前の会社と同じ、サウンディングは手回しにこだわっていて、機械式じゃなく、やむなく、その近くにある機械式でやってる業者にお願いすることになって。機械式の大きな利点としては、調査を行う人間の技量に関係なく標準化されたデータが上がってくるという点にある。あと、一軒当たりの作業は楽だし。欲しいのはまさに標準化されたデータだったんだが、その業者の人と電話で話していて、いや、知ってたけど、そのかかる料金に、泣きそうになった。そんな安いお金でやってるの?って。まぁ、もうちょっと払ってもいいんだよ、なんていう権限もないので、ああそうですか、それでお願いします、なんだけど。

 なんだかな。Blanky Jet Cityが解散したころの浅井健一氏が、コンピュータが出てきて、人の3分の1で仕事ができるようになって、じゃあ、残りの3分の2の時間、豊かに過ごせるようになったかというと、そうじゃなく、人間の労働の価値が3分の1に削られて、3倍の仕事やらないといけなくなった、みたいなことを何かのインタビューで言っていたのを読んだ、それに似たようなことを考えた。仕事一軒の作業、身体はそれだけは楽になったが、数こなさないと生活に追いつかない。結果余計疲れる。時間も無くなる。
 知見が増えるのはいいことだが、便利になって、その実なんか不幸になってるよね、って。

 ちょっとやるせない思いになってしまいましたとさ。