7430 Seeley-Kawasaki H2A 1973
「解せない買い物」
「人のセックスを笑うな」という、確か芥川賞か直木賞かの候補になった小説があったと思うが、「人の買い物を腐すな」という結論になりそうな文章、行きます。
前の会社、今の会社と、住宅地盤に関する仕事をしている。三つ前の文章にも書いた通り。で前の会社にいた時、”機械式”でなく、手回しでサウンディングと呼ばれる地盤調査を行っていなんだが、オレがいた会社では「すっとんクルクル」と呼んでありがたがったタイプの地盤があった。現場作業員的にである。地表から軟弱で、100㎏f、10KNの重りを乗せるか、それすら乗せるまでもなく、調査器具であるスクリューポイントいうねじねじがついた棒が、回さずにずぶずぶ沈んでいくのである。回す手間がないだけ、すごく楽。100kgf乗せなくても沈んでくれるなら、尚楽。乗せるのも人力で、載せる台に5㎏、10㎏、10㎏、25㎏、25㎏、25㎏と載せていくので、5kgf、15kgf、25kgf、50kgf、75kgf、100kgfの段階での荷重での調査具、ねじねじのついた棒の挙動を観察することになる。さすがに、調査員もそこを歩いているわけだから、5kgfでの沈み込み、自沈はないのだが、50kgfぐらいから怪しくなる地盤っていうのは結構あって、ちょっと乗せて急に沈み込みそうなら重りをさっと外すのが正式と習ったが、外す間もなく、どっしゃんと落ちるように自沈する地盤もあったりした。当然、そういう地盤は軟弱である、ほぼ。
っていうか、そんな地盤、まぁ、地表こそ、乾いた土に見えても、地下水位が地表のすぐ下ぐらいにあって、もう、土のふりした水と言っていい。まぁ、専門的には別の言い方があるんだけど。
で、まぁ、オレら(現地で調査作業する奴)は楽でいいんだけど、なんで、こんな土地かうかね? なんでこんなところに家建てるかね? と思ってしまっていたわけである。
あぁ、そうだ、で、「すっとんクルクル」なんだけど、一応ね、6~7mの深さまではなんとか調査しましょうね、というお約束があった。基礎の下にかかる建物のチカラというのは、まぁ、何となく広がっていくような広がっていかないような、玉ねぎを逆さにしたような、じゃなくて「球根」なんて言い方してたな。まぁ、単純にそんな力がかかったとして地盤に影響があるほどの力がかかるのはどっかその辺まで、と、ざっくりと言ってたんだけど、ま、実際はそんな単純なものじゃないんだけどね。で、その6~7m、すとんと落ちるように自沈して、そのあと硬い層に当たって、くるくる軽やかに空回りする様を言い表した言葉であります。
今勤めてる会社の近くも割とそういうところが多く、印象深いのが、10mまで一度も手回しせず終了、5点すべてそうだった、というところがあった。現在、しっかり店舗付き住宅が建っていますがね。
まぁ、建つには建ちますよ。しっかり正しくコストをかけて地盤にも手を入れれば。でも、地盤にお金をかけるというと、なんか損したみたいなこと言う人もいて、なら、なんでそこに土地を買った? ということになる。解せない買い物であります。
直接地盤についてではないが、東京都民の、収入がやや多い人々のタワマン信仰も解せない。まぁ、これはオレの価値観によるものだが、どうも、ね、同じく前の会社にいた時ボーリング調査で敷地内に入った養鶏”工場”の鶏舎の中のブロイラーを連想させて嫌なんだよねぇ。一匹一匹が最小限のスペースに押し込められ、同じ方向を向いている様っていうのは、不気味ですらあったんだが、まぁ、それとタワマン、延いては東京都民の皆さんの暮らし向きと重ねるというのも乱暴なんだが、とりあえず、建物そのものはまっとうに作られていれば、想定される最大限の大きさの地震とかには耐えられるのでしょうが、伝え聞くタワマンの立地、ことごとく液状化したり、場合によっては足元津波にやられるところだったり。大地震となれば、救援が届くのも結構時間がかかるだろうし、電気はないと考えるべきだから高層階にいれば上り下り大変だし、建物だけは無事で、中も大変、外も大変、というのが想像されるんだが、対策されてるんだろうか? そう考えるだけで、よく、そういう物件欲しがるよなぁ、と思ってしまう。これも、オレ的には解せない買い物。
でもね、仕方ないっていうか、まぁ、当地のそういう解せない買い物って、出資者たる親の存在があるんだよね。親の土地で建てたり、親にお金出してもらう代わりに近くに住むことになってしまったり。そういうパターンがかなり多い。
でも、そういうパターンと離れた買い物をした同級生が二人ほどいて、一人は、海の近く、一人は、川の近くの、江戸時代までは湿原であったであろう所。最近では寧ろオレの住んでる町内が床下浸水で全国ニュースになったりするが、その前はよく水が付いたあたりである。行ったことはないが、しかし、二件とも、そんな大げさな家ではなさそうだ。子供に継がせるとかそういうことを前提にせず、自分が気持ちよく住めそうなところに家を買ったみたいだ。
いるよね。タワマンもそうか。よい眺めが何よりの自分の人生に対する報酬であるようにとらえているのかもしない人。
そう考えると、リスクを承知したうえであればそういう買い物もありなのか、と思ったりもする。どのみち、何があっても大丈夫なんて言うところは日本にはほとんどないのだし。
というところで、画像につながる。シーリーというメーカーのフレームにカワサキの750マッハのエンジンを積んだスペシャルバイクである。まぁ、合理性で乗るものじゃない。乗りたいから乗る。文句あるか? と言われそうな単車である。まぁ、そういうのでいいんじゃないかとも思ったりするのだ。
ただただ、やはり事前に相談を受ければ、「やめた方がいいんじゃない?」と言ってしまいそう。でも、買うんだよね。では買った後どうするか、というのが大事な話になるわけだ。