2025年8月15日金曜日

「贈与」に至る/あらかじめ組み込まれた自壊のプログラム? 4 「デジタル生存競争」要約




 岡田斗司夫氏のYOUTUBEチャンネルで、いつだったか、ダグラス・ラシュコフ氏の「デジタル生存競争」についての話があった。冒頭の紹介で、ちょっとね、これは衝撃的だった、と言えばいいのかな?  


 オレから見て、もうこの文明には先がない、と言う見方というのは、単にオレが暗愚なだけで、頭のいい奴等にはちゃんと、この世界の未来像は描けているに違いない。普段は、「あと、二、三世代で人類は絶滅近くまで衰えるさ」とか「そろそろ生態系総入れ替えがあるんじゃない?」なんてうそぶいているオレだが、どこか楽観しているところがあった。


 ところがだ、今を時めくテック系スーパーリッチたちは、ちっとも人類の未来なんて考えていない、という、これはラシュコフ氏の考えではなく、氏が実際見聞きしたことであるというところがね、なんともはや。 



 物語の始まりは、ラシュコフ氏が高額な講演料を提示され、「未来について語ってほしい」と依頼される場面だ。


 彼はテクノロジーに関する一般的なカンファレンスかと思って出向くのだが、実際には遠隔地の高級ホテルに通され、待っていたのは5人の超富裕層の男性たち――すべてテクノロジー業界の成功者、つまり現代の「支配階級」とも言える億万長者たちだった。

 彼らは次々と質問を投げかけますが、その内容は彼の予想を大きく裏切るものだった。「ニュージーランドとアラスカ、どちらが気候変動後により安全だと思うか?」とか、「地下施設の空気循環をどうすべきか?」とか「AIを使って警備員の忠誠を管理する方法はあるか?」とか、「自分の資産を守るには、どのような技術が必要か?」等々。 


 つまり彼らは、「いかにして文明の崩壊後に自分だけが安全に生き延びるか」というテーマにしか関心がなかったのだ。しかもその議論は、世界の修復や共有の未来を築くための話ではなく、「他者から切り離された自分だけのシェルターで生き延びる」という、徹底的に利己的なもの。  ここでのラシュコフ氏が受けた衝撃たるや。岡田氏のチャンネルを聞いて、自分でも読んで、オレだってそうだった。彼らは社会をより良くするテクノロジーの活用ではなく、テクノロジーを「逃避装置」として利用している。しかも、こうした考え方――自分たちが創った問題の影響から自分だけを守ろうとする姿勢――は、実は現在のテック業界全体に広く浸透している「思考様式(The Mindset)」であると彼は分析している。



 このまま第一章、行っておこう。

 第一章では、冒頭で提示された「マインドセット(The Mindset)」という考え方をさらに深掘りしている。

 ラシュコフ氏が言う「マインドセット」とは、現代のテック億万長者たちが共有する、非常に特徴的な世界観のようだ。それは以下のような前提に基づいている。


 〇人間社会は根本的に壊れている。

 〇進歩とは、テクノロジーによって自然や人間性を「制御・超越」すること。

 〇問題は「修復する」よりも、「脱出する」方が合理的。

 〇富と技術こそが生き延びる手段であり、倫理や共感は贅沢品。


 このマインドセットにとらわれることで、富裕層は世界の不平等や気候危機といった「自分たちが加担してきた問題」から目を逸らし、むしろそれらを前提として自己防衛にリソースを注ぐようになる。

 しかも彼らは、社会的連帯や制度の改善よりも、「仮想通貨」「AI」「宇宙移住」「地下シェルター」「サイボーグ化」といった“個人だけが逃げ切るための技術”に投資していく。


 ラシュコフ氏はこれを「テクノロジー信仰の終着点」だと批判する。もともと、インターネットやIT革命は人々をつなげ、知識や権力を分散させるためのものでした。しかしその理念は、今や富裕層によって乗っ取られ、「選ばれた者だけが“後”を生き延びる」ための道具へと変質してしまったのだ。


 また、ラシュコフ氏は「このマインドセットがテック界だけでなく、一般市民にも影響を与えている」とも指摘している。たとえば多くの人々が、資本主義に不満を持ちながらも「自分もいつか勝者になれる」と思ってしまう幻想に取り込まれているというのだ。


 この章では、ラシュコフ氏が非常に重要な問いを投げかけている。 「本当にテクノロジーは進歩しているのか? それとも“逃げ方”が進化しているだけなのか?」


 この問いを軸に、この本は今後、ビジネス、教育、仮想通貨、AI、宇宙開発などの分野で「マインドセット」がどう作用しているかを見ていっている。



 さて、困ったね。棹差せば何とかなるなんてことはないけれど、今の流れに身を任せていても、ジリ貧からの破滅的衰退しかないようですよ、人類ったら。


 第二章以下をざっと要約していく。 


 第二章:暗号通貨と脱中央集権の誤算

 仮想通貨は自由と平等の理想を掲げつつ、現実では投機と格差再生産の手段となる。リバタリアニズムとの親和性が個人主義と自己保存に結びつく問題を浮き彫りに。 


 第三章:宇宙と身体からの脱出願望

 火星移住や意識アップロードは、人類共通の修復より“選民の脱出”を目指す極端な思想。テクノロジー信仰を宗教的救済と見なす視点で、現実逃避を批判。 


 第四章:教育とビジネスにおける階級再生産

  教育とビジネス構造がエリート層を選抜し、連帯を弱める。企業家精神や競争が社会的責任を後景に追いやり、構造的格差を固定化するメカニズムを明らかに。 


 第五章:自己中心的社会の進行

  競争主義と個人主義が倫理や共感を圧殺し、情報格差と孤立を助長。人々を“個別化”し、協力と連帯感を失わせる結果として、社会全体が分断されていく危機を描写。


 第六章(仮称):改革への処方箋

  テクノロジーを社会的連帯の道具とし、共感と協力を基盤に教育・ビジネスを再設計。富の再分配・贈与的経済への転換を目指し、人間らしさの回復を提言する。


 最終章(まとめ/展望) 

 マインドセットを批判し、個人と社会の再編を訴える。選民的思考から協力型社会へシフトすることで、持続可能で倫理的な未来が構築可能であると結ぶ。


  どうする? 革命でも起こす? まぁ、誰もそんなガッツないよね。やっても明るい未来が来るとは思えない。さっきから、オレの中のジョニー・ロットンが、囁くどころか、「No future for you!」ってがなってるんだが。 


 ラシュコフさん、マインドセットをどんなふうに変えるのか、そういう提言で終わっているが、まぁ、告発までは衝撃的だった。でも、それへの対処はなんというかな、これまで切り返されてきた優等生的結論の域を出ていない。  確かに、そんな風に変わって行けたなら素晴らしいけれど、どんな形を目指すべきかは言えても、そこまでのロードマップが提示されていない。


 どうやったら変えていけるんだ?  いったいどうやったら変えられるんだ?

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