2024年8月13日火曜日

8435 Cherokee & T0082,0083 古代の象の夢なりき episode 0 バランスの悪い男

 

8435 Cherokee

T0082,0083 古代の象の夢なりき episode 0 バランスの悪い男

前回はこちら


 うちの母は、真矢みき氏が嫌いなのだ、と言ったのはかれこれ10年以上は昔のことだ。その前には黒木瞳氏の顔立ちが嫌いと言っていた。宝塚が嫌いなんだろうか? そんなことも思ったりもしたが、そもそも、普段より、母どころか一家して、タカラヅカは興味の外の外。真矢氏黒木氏がタカラヅカ出身であることも知らぬ可能性の方が高い。個別に嫌いなのか、共通して纏った空気が嫌いなのか。ま、どっちでもいい。
 で、真矢みき氏である。朝のテレビ番組で、ある時、ある若い男が作った文章、その男、何かやらかしたんじゃなかったかな? を評して精神のバランスが悪いのが透けて見える、とか何とか、そんな感じのことを言っている場面を偶然目にした。

 まあ、それはその通り、ぐうの音も出ない、元も子もない、そのようなことを思った記憶がある。一般通念的には間違いなくそうだろう。特に、女性の勝ち組から見たならば、そんな箸にも棒にも引っかからない、故に鬱屈を抱えた若い男の思考など何の価値も感じないどころか、この世にとって有害なものにしか感じないだろう。実際にそう言う鬱屈が悲惨だったり救いようがなかったりする事案を引き起こすことも多かったりするのだから、反論はできない。

 或いは、90年代の前半だ。香山リカ氏が、そう言うのを「適応障害と言う名の病気」と、何かに書き切った。病気にされちまった。

 いちいちその通りで、反論出来ずに名状し難い何かどす黒い物だけが腹の底にどんどん溜まって行く。ただ思った。文学は負けたのだ、と。

 そんなバランスの悪い男は、いつも気を失いそうな心持ちで、ゾンビのように街を徘徊するか、それすら憂いてしまい、引きこもるようになる。物理的にか、精神的にか。

 そんな感じのアラサー男がいたと思いねぇ。


    1996年の10月の後半か11月だったか、高岡駅前の広告制作会社のアートディレクターに連れられていった富山市の外れにある平屋の多分なんかの作業所だったところのゲーム制作会社。その会社の名前は、仮に「グレムリン」としておく。
 出迎えてくれたのが3人。
 この時、オレは丁度30才だったが、オレよ10才ほど年上の背が高いヒゲのイケオジ、「ボス」。この会社の会長なんだそうだ。
 同じく10才ぐらいオレより年上、背は高くなく後ろで髪の毛を括った男性、「ちょんまげ」さん。社長だと。
 そして、もう一人、オレよりは三つ四つ程度の年上だろう、脂っぽい中途半端なロン毛、ガリヒョロの、如何にもオールドスタイルなオタク、乗っていたクルマに因み「ランエボ」氏、専務。

 あともう一人。お茶を出してくれたが、あとの時間はPCに向かってなんか作業していた、当時、ある食堂のお嬢さんと、お付き合いしていて、結婚したんじゃなかったかな?違うかな? 穏やかな感じのオレよりほんの少しだけ若そうな「マスオ」君。

 緊張感があるのかないのかわからない雰囲気で面談が始まった。


 画像のジープチェロキーは、オレを「グレムリン」に引き合わせていただけたとき、高岡駅前の広告屋さんのアートディレクターが乗っておられたものと同系同色のものだ。

 カーステレオで、ギターの曲が流れ出した。「コレなんだかわかる?」アートディレクター氏が訊ねてきた。聴いたことはなかったが、細やかに音を糸のようにつないでいく曲想があの曲っぽいな、と思ったら案の定。
 チェロキーの車内でかかったのは、「Hell Freezes Over」の中の「Hotel California」。このバージョンを聴いたのはその時が初めてだった。




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