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2025年7月15日火曜日

トランプのBRICSへの締め上げは有効か? そして日本は?

 

 ではトランプの締め上げは有効なんだろうか? ということ。寧ろここへきてのBRICSの連携はトランプ関税ゆえのものとも思えるが?
 
 結論から言えば、トランプの関税締め上げは「短期的には効果あり」「中長期的にはBRICS連携を加速させる逆効果の面が大きい」と評価できないか?

【1】短期的効果:制裁と恐怖による「牽制」

トランプの関税は、以下のような効果を持っている。

〇特定の新興国(例:南アやインドネシア)は「アメリカ市場の重要性」を再認識し、BRICS完全参加に消極的になった。

〇一部の企業(特にブラジルの農産物輸出企業など)が米国への輸出路を守るため、ドル決済を維持しようとした。 〇実際、2024年末~2025年初めにかけて、ブラジル・インド間でBRICS通貨導入に慎重論が出た背景には、こうしたアメリカの圧力がある。


 つまり、「今BRICSに傾くとアメリカから潰されるかも」という現実的リスク感は、参加国にとって無視できない。


【2】中長期的影響:トランプ関税が「米覇権からの離脱欲求」を刺激

 ただし、これは砂上の楼閣であり、トランプの圧力はむしろ以下のような「構造的反発」を生み出しているのではないか?

(A)関税で連携が強化される構図

〇トランプが関税を振りかざす → 各国が「米国依存の脆さ」を実感 → 通貨・貿易多様化へ
 例:トルコ・エジプト・アルゼンチンなど、BRICS外縁国が「非ドル圏での決済ルート模索」を加速

〇中国・ロシアの連携は深化(人民元建てエネルギー決済の増加、ロシアによる金建てルーブル戦略)

(B)関税が「ドル不信」「アメリカ不信」を制度化する

〇政治的に気に入らない国に関税・制裁を乱発する米国」という印象は、ドルそのものを“地政学リスク”に変質させている。

〇そのため、ドル離れ=リスク分散の論理がBRICS圏内では早晩「反米」ではなく「合理性」として共有されつつあるかもしれない。

【3】BRICSの通貨・決済戦略は逆に進展中

以下のような具体的進展が2025年に入って顕著だ。

 通貨で言えば、「BRICSペイ」(共通決済ネット)をリオ・サミットで正式採択(2025年7月)している。

 決済では、 ブラジル・中国・ロシアが「自国通貨・人民元・金建て」での3国間貿易システム構築が開始した。

 物流は、中国~中東~アフリカ経由の「反西側」経済回廊の整備が加速しているし、

 金融も、新開発銀行(BRICS銀行)によるドル建て融資の削減と自国通貨融資への移行しつつある。


 結論として、トランプの戦略は「火に油」の側面が強い気がする。

 短期的には、確かに一部の国・企業には効果あり。様子見姿勢を生んでいる。
 しかし中長期的には、米国依存のリスク回避を加速し、BRICS・脱ドル陣営の結束を逆に後押ししているということがあるだろうし、
 戦略的帰結として、アメリカの影響力は「市場」では残るが、「ルールメイカー」では次第に退潮へと向かう可能性が結構あるように思われる。


 つまり、「締め上げることで世界が逃げ始めた」状態だ。
  「恐怖で秩序を維持しようとした結果、逃散と連帯を招く」――これは歴史的にも繰り返されるパターンじゃないかと思う。


 願望を言うならば、日本は、これを機会に上手くアメリカを操れるぐらいになってほしいが?

 実際に今の国際情勢(米中・BRICS対立と米国の覇権揺らぎ)は、日本がアメリカとの関係を見直し、「言いなりではなく、交渉できる同盟国」として振る舞うチャンスに違いない。


 以下に、その可能性と障壁、戦略について整理してみた。

日本が「アメリカを操る」好機である理由

1. アメリカが日本を必要とする局面に入った。

〇アジア戦略上の要石:中国包囲網(AUKUS、QUAD)において日本は不可欠。
〇製造業回帰のパートナー:半導体・バッテリー・EVなど、サプライチェーン再編における日本の存在感。
〇経済的な従属から戦略的補完へ:円安を利用した日米企業協業が活性化。実は米国は日本の円安政策にもある程度譲歩している。

 要するに、日本は「代替不能な駒」になっている局面。ここに付け込めば、交渉の余地が生まれるとおもうのだが。


2. トランプの一国主義は“自国ファーストの同盟再定義”を促す

 トランプは「日本が防衛費をもっと負担すべき」と言うが、裏返せば「負担と引き換えに自主性を獲得できる交渉空間」が生まれる。特に、経済協力や通商問題では、従来より“ノー”を言いやすい構造が現れている。


 では対等な交渉に向かうには何が必要だろう?

 戦略的独立性はどうか? 現状、安保は米依存、経済は中国依存だが、独自外交、軍事判断能力の確保(経済安全保障含む)が可能になり得る。
 通貨・金融の主権性でいえば、日銀政策でのアメリカ配慮の現状だが、通貨・金利政策の国内優先と自立性維持を目指してもいいように思う。
 世論も成熟してほしい。対米従属でも「安心」と思う層が多数な現在だけど、対等外交を支える戦略的な国民意識の形成があってほしい。
 鍵となる知的交渉力だ。確かに官僚は優秀だが、政治は対米コンプレックスまみれ。民間・議会・外交官の“戦略語”と情報力強化があってほしい。

 どうすれば「アメリカを操る日本」になれるか? 大げさだな。対等な交渉力を持つ日本になれるか、だ。

 米中対立において、「仲裁」ではなく「秩序設計の補佐役」として動くというのはどうだ? 例えば、通貨の安定、技術基準、サプライチェーン標準などで「日米主導」の提案を行うとか。

 BRICSとも対話可能な“西側に留まりつつ橋渡しできる国”を演出するという手もある。日本は中国・ロシアの信任は得にくいが、インド・ブラジル・南アとの関係強化に成功すれば、対BRICS外交でも主導権を持てると思う。

 通商交渉で巧みに対米譲歩を逆手に取れたらいいなぁ。安全保障とセットで「これを飲むなら、こちらは譲る」のカードを持ち出してほしい。例で言うなら、デジタル貿易協定、EV補助金、対中輸出品目の扱いなどで譲歩を引き出すとか。

 日本が今やるべきは「依存から交渉への脱皮」であるといつも思う。 トランプのような「圧迫外交者」は、弱腰な国は吸い尽くすが、計算高い国には取引を持ちかける。日本がその後者になるか前者のままでいるかは、今この時期の外交と戦略次第だろう。